まめカメラ

まめのカメラブログ

カメラが好きな八王子在住 28歳のブログ

【自作寓話】利己的なカエル






あるところに傲慢なカエルがいた。

カエルはいつも池のほとりの石の腹でくつろぎ

気が向けば池を泳いだ。

脇にはカエルの胴体ほどの大きさの真珠を抱え

他のカエルが来ると真珠の美しさを自慢した。





ある時、カエルの親分が訪ねてきた。



「おい。

今、池の南側で大きな穴を掘っている。

みんな手伝ってくれているんだが

お前さんも手伝ってはくれないか?」



カエルは鼻で笑ってこう答えた。



それを手伝うメリットは?


わざわざ大勢でそんな大きな穴なんか掘らなくても

ほら!池の底の枯葉に潜れば立派なお家じゃない!」




カエルの親分は、
もういい、という顔をして去っていった。





次にカエルの娘がやってきた。


「もしお相手がいなければ私と夫婦になってくださらない?」





君と結婚するメリットは?


どうやらこの池で1番の美人さんと言われているそうだが

どうせ他の女たちのように

この真珠が目当てなんだろう?!

どいつもこいつも最後にはこの綺麗な真珠を盗もうとしやがる!

消えた消えた!」


カエルの娘は泣きながら去っていった。





次に昔からの親友のカエルが来た。


「おーい、元気かい!

聞いてくれよ!さっき池でこんなに大きな

蓮の葉を手に入れたんだ!

これなら雨だって、夏の太陽だって凌げる!

どうだい!君の真珠と交換しようよ!」





蓮の葉と交換するメリットは?


そんなの一目瞭然だよな、メリットなんか無い。

なんでそんな薄汚い葉っぱと

この美しい真珠を取替えないといけないんだ?

君は物の価値ってものを分かっていないね〜昔から!」


親友もまたカエルの元を去っていった。







やがて冬が来てカエルたちは冬眠に入った。


幾月か過ぎてだんだんと暖かくなった。





カエルは一時も肌身離さず抱き抱えていた真珠と一緒に地上に出た。


そこは灼熱だった。

池は干上がり、草木は枯れ、土も乾いていた。


これでは皮膚が乾いてしまうし

なによりご飯にありつけない。



カエルは

他のカエルも同じように困っているだろうと

あたりを歩いてみた。

しかし、他のカエルの姿は見えず、気配すらない。


池の南側にたどり着くと、大きな洞穴が見えた。

しかもその洞穴からカエルの親分が出てきた。



「おい親分!

こりゃーなんだい!

池も干上がっちまって草も虫も無い!

これじゃあ俺たちは終わりだ!」




親分は肩を落として話し始めた。




「あぁ知ってたさ。

だから夏の間に大きな大きな洞穴をみんなで掘ったんだ。

中にはこの干上がった池よりもっと大きな池を作ったよ。

俺は池で1番の美人を嫁にもらって

たくさんの子供達や仲間と楽しく暮らしているんだ。」


洞穴の中を覗くと

何百というオタマジャクシが池をスイスイと泳ぎ

いけのほとりには親友が蓮の葉をかざしながら

陽気に歌を歌っていた。



カエルは顔を真っ赤にして親分に叫んだ。


「こうなることを分かっていて

なんで教えてくれなかったんだよ!

真珠!

この真珠をやるから!

俺も仲間に入れてくれよ!」



すると親分は腕を組んでこう言った。


「お前さんを仲間にするメリットは?」

すると空からカラスが飛んできて

カエルをくわえて去っていってしまった。

カエルはそれでも真珠を離さなかった。


あーあ、

蓮の葉でもあればみつからなかったのに。