まめカメラ

まめのカメラブログ

カメラが好きな八王子在住 28歳のブログ

【短編小説】ストレス指数 中編


あるところに慢性的にストレス指数が高い男がいた。

彼は至って普通であり、特段世の中に不満もないし、自分の見た目にも多少の自信がある。

しかし、物心着いた頃からストレス指数が常に90近いのだ。

彼はストレス指数が高いことで、大いに損をしてきた。


子供の頃から周りには腫れ物のように扱われた。
ストレス指数が高いからなにか事件を起こすんじゃないか、何かが起こってからでは遅いからあの子を転校させたらどうか、など心無い保護者たちの言葉に子供ながら深く傷ついた。

そんな状況が続き、よく転校を繰り返していたため、友達も出来なかった。


なんとか見返してやろう!と勉強を人一倍、いや百倍ほど頑張って国内1位の偏差値を誇る大学に入社した。


大学では、やはりストレス指数のせいで友達は出来なかったが、法律を勉強し、ついに司法試験に合格、晴れて弁護士となった。


「今までストレス指数のせいで散々な人生だった。だが、法律は絶対的な存在だ。法律には、扱う人間のストレス指数など介入する余地はない。
法律は至って冷静で、理性的で、個人の価値観に左右されることはない。
法律を学んだものであれば、仮にIQ500の知識人でも、高卒のフリーターでも同じ決断になる。
もうストレス指数を気にしなくていい生活が出来るんだ。」


男はやっと陽向に出た気がしたのだった。

想像通り、いや、想像以上に男の人生は上手く行き始めた。
仕事は出来、頭も切れるため、最初はストレス指数が高いことを怪訝に思っていた同僚達も、何故彼が?と思い始め、人生で初めて人の輪の中に入り、他人に認められる感覚を知った。

そうすると彼のストレス指数も日に日に下がっていった。
今までだいたい80後半だったが、最近では80を下回る日もあり、調子がいい日の最高は72だった。

彼はだんだんと普通の人間の生活を送れるようになった。
人生で初めて彼女も出来た。

法律事務所の受付で毎朝顔を合わせる同年代の女性で、入門時のストレス指数確認をしていたのが彼女だった。

なので、彼女は男のストレス指数が日に日に下がっていくことを間近で見ていた。



男は人生で1番の幸せを味わっていた。

3年が経って、男のストレス指数は60程度に下がっていた。

仕事も順調に行き、思い切って彼女にプロポーズをし、更なる幸せを手に入れた。



しかし、雲行きが怪しくなった。

彼女の両親が「ストレス指数が50を超える人間と結婚させることは出来ない」と言い始めたのだ。男のストレス指数はまだ60前後だった。


より身近な人間にこそ、基準は厳しいものになる。
世間一般のストレス指数の平均が50なので、今後深く関わり合う人間には平均以上であって欲しい、という考えは理解できるものだった。


男は噂話で聞いた、「ストレス指数が1の盲人」を思い出した。


そのストレス指数が1の盲人は世間からは離れ、山奥に1人で暮らしているという。


その盲人に会えば、ストレス指数を下げる方法を教えてくれるかもしれない。

なんとしても彼女と結婚をし、本当の幸せを掴みたい男は、決心してその盲人の元を訪れた。

【短編小説】ストレス指数 前編

その人のストレス状態を見れるようになったら
世の中はどう変わるだろうか。





21世紀前半、世界的なパンデミックによる外出制限や物資不足など、人間の生活に大いに関係する分野での悪影響が続いていた。

その為か、イタズラから窃盗、殺人まで、世間では悪質な事件が増え続け、1990年代と比べて4倍もの件数になっていた。

国は、抑圧されストレスが溜まった国民たちを管理しようと


ストレス指数 という基準を設けた。


ストレス指数は顔認証の要領で、モニターに顔を映すと表情筋、顔色、瞳孔の動きなど複合的な要素から算出される。
カメラで顔を撮るだけで、その人がどの程度ストレスを抱えているかが1〜100のレベルで分かるのだ。



そのストレス指数を一定期間監視していると、悪事を働く者達のストレス指数は
軒並み95を超えていた。
窃盗を行った者を捕まえた際に計測してみると上限の100になっていた。


事件を起こす人間とストレス指数との関係性が明らかになり、国はもう一歩進んだ運用を始めた。


街中の監視カメラを活用し、道行く人々のストレス指数をモニタリングし始めたのだ。

そしてストレス指数が95を超える人間については要注意人物として特別監視を行った。

その中には万引きの常習犯や、死体遺棄をした人間などの犯罪者もおり、検挙件数も徐々に上がってきていた。



国はこのストレス指数を世間にオープンにし、各個人が開示することで、さらなる治安の向上が見込めると考えた。


まずはショッピングモールやスーパー、駅やコンサート会場などにストレス指数が確認できるカメラとモニターを設置した。
カメラに顔が映った人間の頭の上にはその人間のストレス指数が表示されるようになっている。

ストレス指数が90を超えている場合、トラブルを起こす可能性が高いとして入場を拒否した。あるコンサート会場ではストレス指数が99の男が実はカバンの中に刃物を隠し持っていた、ということもあった。

また自分のストレス状態を確認したい者達でモニターには長蛇の列が出来ることもあった。
時には出勤時の自分のストレス指数を確認して急遽休暇を取るサラリーマンもいたし、カップルは自分達のストレス指数が低いとSNSでラブラブだと自慢した。



このようにして、ストレス指数は治安問題や、良好な人間関係のためにかかせない指標となった。

そして遂にはSNSでもストレス指数の開示が義務付けられるようになった。
フォロー数、フォロワー数などの横にストレス指数が表示されるようになり、アカウント所有者は週に1回、端末のカメラ機能で自分の顔を撮影し、その際のストレス指数がトップページに表示された。この顔認証を行わないと投稿も閲覧も出来ない仕組みがとられた。


ストレス指数は匿名性の高いSNSにおいて十分な効力を発揮した。


芸能人は誹謗中傷されたアカウントのストレス指数を確認して、ただストレスが溜まっている暇人の戯言程度に受け止められるようになった。

またストレス指数が高いアカウントはそういった負の投稿をあえてせず、「私はあくまで幸せですよ」とアピールしたいがために善良な投稿をする傾向も見られたのだ。

逆に、今まで幸せオーラ全開の投稿をしていた美女のストレス指数が高かったりすると、もはや羨ましくもなんともなく、ただ可哀想に見えて、妬みやひがみも軽減された。


こうしてSNS上のトラブルは急激に減少していった。


また、「ストレス指数を10以下に保つ10の方法」などという自己啓発本や、ストレス指数を下げるカウンセリングのネット動画が氾濫するようになり、

いよいよストレス指数は人間社会や経済にまで溶け込み、欠かせないものになっていった。




続く

【自作寓話】海を渡るライオン

ある無謀なライオンがいた。

ライオンは水平線に見える大陸に憧れていたので

決心して海を泳ぎだした。


百獣の王と呼ばれ

威風堂々としたライオンが

犬かきで海をかき分け、

3日かけて、やっとこさ

大陸にたどり着いた。



岸にたどり着いたライオンは

あまりの疲れに

波打ち際に倒れ込んでしまった。



すると、その大陸の長老ライオンがやってきて話しかけた。




「まさかこの海を泳いで来なさったのか。」



「あぁ、三日三晩、波をかき分けた。

犬かきでな。」


「犬かき!

百獣の王と称される我々ライオンが!!

ライオンとは高貴で矜恃を持った存在であるべきなのに…!

立派であるはずのたてがみも

海に濡れてまるでワカメのようではないか。

そんな姿を見られて恥ずかしいとは思わんか。

情けないとは思わんか。」



ライオンはただ一言。




「だからお前はこの大陸から出られないのだ」





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




周りの目が気になって動けない、なんてことが現代では結構多くなっていると感じます。

でも、案外誰も見ていないもので、周りの目なんてものは無いに等しく、むしろ足枷でしかないと思います。

バカにされようが蔑まされようが
自分がやりたいことをやったもん勝ち。

人生1回。思い切って動きましょう。

という寓話でした。

【自作寓話】王様のいたずら


ある夜、礼儀正しい王様が

ステーキを手掴みで食べ始めた。

いつもはきれいにナイフとフォークを使うのに。

執事たちは思いもよらない王様の行動にびっくりして

「お熱くはないですか?」

と王様を心配した。

王様は

「はぁ」

と大きなため息をついた。




次の日、王様は

先祖代々伝わる王家の壺を割った。

使用人が

「お怪我はありませんか?」

と粉々になった壺をほうきで片付けた。

王様はまた

「はぁ」

とため息をついた。




王様はその後も

屋敷の裏の林を燃やしたり

飼っている馬を逃がしたり

お酒を川に流したり、と

かつての礼儀正しい、皆が慕う王様では

なくなってしまった。




「王様はきっと退屈が過ぎて

おかしくなってしまったんだ。

何をしても最後には

大きなため息をついておられる。

王妃もいなければ、子供もいない。

この国は衰退する一方だ。」




使用人たちの心配を他所に

王様は次に街へ繰り出した。



大きな袋を肩に担いで

街で1番の塔の上まで登ると

勢いよく袋の中身をばらまいた。



それはお金であった。




突然、お金が空から降ってきたので

市民たちは驚き、我先にとお金を拾い集めた。



お金をばら撒き終わった王様が

塔から降りてくると

落ちたお金に目もくれず

ひとりの女が王様の目の前にあらわれた。





「こんなことしてないで

もっと王様らしくいなさい!」



その後、王様は礼儀正しい王様に戻った。

隣では王妃が

王様を毎日怒っている。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



大人になって、怒られるということがめっきり減りました。自分自身も何かに怒ることが減ったように思います。

大人になってからの叱咤は
大きな愛情か、ストレスの捌け口でしょう。

王様は金に目もくれず怒ってきた女に今生の愛情を感じたのでしょう。そんな人を求めてわざと怒られるようなことをしていたのでした。


怒ってくれる人こそ大切にしましょうね。

【自作寓話】正しいルール


ある時、社員の1人が指摘した。

「今現在、製造が完了した製品に

赤いシールを貼る運用をしていますが

社内規定を見ると、製造完了品には

オレンジ色のシールを貼ること

と書かれている。

運用を見直さなくてはならない。」




それを聞いた他の部署の社員たちは

「まさか今までの運用が間違って居たなんて!」

「全ての部署で赤いシールを使っているから

これは大掛かりな運用変更になるぞ」

「オレンジシールの単価はいくらだ?」

と慌て始めた。




社員たちは何度か打ち合わせを設け、

あーでもないこーでもない、と

議論を交わした。





するとぽっと出てきた外国籍の社員が一言。





「赤イシールデ良クナイ?」





-------------------


これはこの間、僕の会社でも起こった出来事。
社内規定と実運用が合っていないことが分かったが、大勢の人は社内規定を変えるという発想がなかった。

赤いシールのままでも、誰も困らないどころかみんなが慣れている運用のままでいられるし、デメリットも生じていないので、オレンジ色のシールに変える必要はない。

日本人はルールを尊重しすぎる傾向にある。

昇りのエスカレーターで長蛇の列が出来ることは海外からは珍しいらしい。だいたいは我先にと扇状に人が集まるはずなのに。


ロボットみたいに規則正しい日本人についての寓話でした。