まめカメラ

まめのカメラブログ

カメラが好きな八王子在住 28歳のブログ

読むの奇怪な物語1 「熱愛」 後編

真っ暗だ。

自分の家のにおいがする。喪服のまま僕は疲れて寝てしまったのか。1日が早送りで進んだんだ。
どんな1日だったのだろう。
明日菜は肉体さえもこの世から無くなってしまったのか。

違う。肉体が焼かれずに残ったところで明日菜は戻っては来ない。二度と会えないことと肉体の有無は全く関係がない。交通事故の連絡を受けた時から、安置所で亡骸と対面した時から、もう明日菜は死んでいたのだ。あの時からもう明日菜には二度と会えないことは決まっていたのだ。

ああ、明日菜は死んだのだ。

さよならを言えなかった。早送りなんてしないで、ちゃんと見送ってあげるべきだった!

「明日菜。
こんな甘えん坊な僕に付き合ってくれてありがとう、バカみたいなことを言うのに笑ってくれてありがとう、ありがとう、ありがとう。
さよなら、さよなら!
最後にちゃんと手を握って、ありがとうとさよならを言ってあげれば良かった。
君とずっと一緒にいたかった。
君の夫は僕なのに、僕は逃げ出した。
君を1人で逝かせてしまった!」





涙で目が霞む。だんだんと暗闇に目がなれてきた。

やけに天井が近い。

すると周りが明るくなってきた。
しかもこの時期にしては暖かい。


棺桶の中だった。布団だと思っていたものは棺桶に敷かれたクッションで、隣には明日菜がいた。自分の家のにおいは明日菜からしていた。温度はどんどん上がってくる。
火葬場だ。しかも火葬の真っ最中だ。


早送りをしたからなぜこんな状況になったのかわからない。火葬の直前で棺桶に潜り込んだのか?明日菜と一緒に死のうと?

でもまた明日菜に会えた。二度と会えないと思っていた明日菜がいつもみたいに隣でぐっすり寝ている。

「明日菜、、明日菜、、」

冷えきった手を握り、抱きついた。


「明日菜、一緒に逝こう。
君のいない人生に希望なんて見いだせない。生き地獄だ。だったら君とこうしてひとつの灰になるよ。生きていくことより、ずっと幸せな道だよ。
明日菜、明日菜。ありがとう。
僕と出会って、僕と結婚してくれて、本当に幸せだった。君以外なんて一切考えられない。君は照れて、バカじゃないのとまた眉を上げて困ったように笑うかもしれないね。僕はずっと君に甘えっぱなしだね。
あぁ、熱い!!熱い熱い!
君が大好きだ!大好きだ大好きだ!!
愛してる!君と死ぬ!!
ずっと一緒だ、、あぁ一緒だ一緒だ一緒だ!
幸せだ!僕は幸せだ!!」


END